2013.06.01(Sat)
ツイッター診断で出た結果にときめいたんで、掌編でも書いてみた。読みたいって思った勢いメモ。
お題/次の新刊タイトル決まったー
http://shindanmaker.com/199417
新刊本『にゃん!にゃん!にゃん!』を出す予定です!甘甘で時代ものです!出なかったらごめんね!
≪にゃんにゃんにゃん・壱≫
山深くの廃屋で一匹の猫娘が暮らしていたのさ。
主人はもう亡くなって、けれど他に行くでもなくその家を守ってたのさ。
ある日、童が一人で迷い込んできた。
一人で山に遊びに来て、迷子になったんだ。
猫娘は童を脅して追い返そうと思ったのだけど、大きな腹の音がしてね。
泣きべそで恥ずかしそうにしてるのが、情けないやらおかしいやらで、気が変わったんだ。
その童を助けてやることにした。
村はこの道を真っ直ぐ下るんだと、途中まで案内して見送ったんだ。
久しぶりに人間と話して、楽しかったのもあるね。
でもまぁ、大した縁じゃなし、これで終わりだと、そう思ったんだ。
ところがその童、遊びに来るようになっちゃったんだ。
名前をせがまれたから教えたら、「ねこー、ねこー」って気安く呼ぶようになった。
大きな声でね。「ねこーねこー」って呼ぶんだ。
それが猫娘には懐かしくてね。頭を撫でてくれた手の平の感触を思い出すんだ。
その日から廃屋は、童と猫娘の遊び場になったんだ。
童は毎日すくすくと成長していくけど、猫娘は出会ったときのまま大きくならない。
丁度、お互いの背丈が同じぐらいになった頃、急に童が来なくなった。
一日待って、二日待って、三日目には猫娘は辛抱貯まらなくなって、人里に下りてみたのさ。
「盗人が捕まった。子供の盗人だ」
そんな話が聞こえてきた。
童が、助けてくれたお礼にといつも猫娘に持ってきた物は、全部盗んだ品物だったのさ。
だが、例え子供でも咎人だ。盗みは死罪だ。
暗い牢の中で、童はべそをかきながら、「もうしないよ。許してよ」と喉がかれるまで言い続けた。
夜が明けたら処刑場行きだ。
童は常習犯だったから、幼いからと許して貰えなかったのだ。
許して貰ったら、また盗みを繰り返していたから。
そんな中、猫の子一匹通れるぐらいの小窓を通って、猫娘が牢の中に忍び込んできたんだ。
驚く童の縄を噛み切って、外に逃げるように言ったんだ。
「ねこはどうする?」と聞けば、「誰かが裁かれないと、ずっと盗人のまま追われるだろ?」
そう言って、猫娘は童の姿に化けたんだ。
暗闇に紛れて外へと逃げ切った童は、振り返ったんだ。
死ぬのは怖くて、罪人でいるのも怖くて。
追われ続けても良いから一緒に逃げよう、って猫娘に言えなかったんだ。
途中でお供え物や畑の作物に手を付けて、隣町に辿り着く頃にはすっかり日が登っていた。
町では、盗人を処刑したらその死体が猫になった話で持ちきりだった。
物の怪だ。妖怪だ、と大騒ぎになったんだ。
これは、お祓いをしてもらわないといかんという話になったそうだ。
裁かれたという罪人とその猫の死体が誰なのか、童にはすぐにわかった。
「ねこが代わりに死んでくれた。これで自分は助かった」と、なぜか喜べなかったんだ。
居てもたってもいられなくなって、顔を隠し、夜を待ってから処刑場に戻ったんだ。
妖怪だから触れてはいけないと、打ち捨てられていた猫の死体を懐に入れて、駆けだした。
人里離れた山道に入ったところで、気づけば童はずっと猫娘に謝り続けていた。
懐の猫は軽くて、固くて、冷たかった。
月明かりの下、息を切らせて道に座り込んだ。
猫の死体を撫でながら、どうしてか安らかなその小さな頭に触れて、涙をこぼして言ったんだ。
「一緒に行こうって言えば良かった」
そもそも、盗みをしたのは猫娘のためだ。
それを忘れて、どうして置いて言ってしまったのか。
「一緒に、よその村に行けば良かったんだ」
後悔で胸が締め付けられた。
そしたら、聞き慣れた声がしたんだ。
「そうだな。主となら、あの家から離れるのも良いかもしれんな」
顔をあげると猫娘が立っていた。
「どうした。呆けた顔をして、お主はほんといつ見ても泣いてばかりだな。
大きくなっても、出会った頃となんもかわりゃせん」
猫娘はいつも通りの笑い顔でそこに居たんだ。
「ああ、その猫か。……ふふ。なぁ主よ。我はいつ、”生きている”と言ったか?」
死んでいた猫が、童の腕の中で息を吹き返した。
手元からぴょんと飛び出すと、あくびしながら伸びをして、毛繕いを始めた。
けれどその身体は死んだままだ。
やっと童にも、”妖怪”が何なのかわかってきた。
猫娘が童の肩に腕を絡めて笑う。鋭い八重歯が見えた。
「さあさ、何処へ連れてってくれるのかのう」
そう言って、猫娘がごろにゃんと頬をすりよせてくる。
膝の下、足下で猫が身をすり寄せてくる。
こうして、妖怪に捕まった童がひとり、猫憑きとして生きていく。
妖怪たちの間で、猫又と一緒に暮らすあやかし退治の青年の話が囁かれるのは、まだまだ先のこと。
今宵はこれにて。
<終>
先に「妖怪退治を生業にするけど臆病な青年とお供の猫娘の話」があった上での、二人の出会い編・過去話ぐらいの位置づけで書いた。
もちろん、妖怪退治本編など考えてない。
「猫娘、少年(童)、妖怪」をキーワードに、
似たような設定で、ストーリー違いをいくつか考えたんで、もうちょっと続く。
甘々……。
某ハートフル殺人鬼は甘々ではないって言われたんで、
あれよりは幸せそうな終わり方に近づけるので手一杯でする。むずい。
一番はほんと、がんばったよ!酉らくがっきおおおお、一気に作品が!
どれもステキですが、14番がとてもお気に入り。文月なのからくがっきまとめてどーんと。
14番の猫耳さんをお選びとは、さすが。
しっぽの毛繕いしてる猫さんは、可愛い!酉らくがっき暫く更新無い間に何があったし!?
…と思ったら2枚目からはいつもの酉さんだったので胸を撫で墜としました。
15番目に未来を感じます…MetalMaxの洗車に装備しそうなウサさいっきーらくがっきそりゃもう、目玉は一番最初に置きますって!
この更新頻度でよく更新に気づくなぁ・・。すごい。
戦車発言で一気に勇ましさが増して、吹いた。
ファンタジーだから、世紀末酉