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逆しまの空4-6

Category逆しまの空
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「リューイ、痛いのか?」
 擬似人格タオから、元の姿に戻ったリスカは、人の手を借りながら歩いている青年の外套を握った。
 じっとりと冷たい感触が、掌に伝わってくる。
 リューイは、フォトの手を借りながら歩いていた。額には汗を浮かべ、苦しそうにしている。何より、夜を優しく照らし、見守る月のような眼差しが白く濁っていた。
 強制的に術を中断した弊害か、網膜に闇が焼き付いたのか。少なくとも、彼が今、見えていないことだけははっきりしていた。
 早く、キャンプに戻って、医療を学んでいるノルンに診てもらう必要がある。
 リューイは、リスカの質問に答えず、何度も同じ言葉を繰り返していた。
「……私は、あの場に残って説明をするべきだった。地牙族の方にも被害は出ただろう。私は……話し合いなどといいながら……」
「リューイ様。言葉を手に入れただけでも、十分な収穫はありました。次の機会はきっとありますとも、ですから、今は戻ってお休みに」
 今にも、また現場に戻りたがりそうなリューイを、フォトが一生懸命に慰める。
 リスカは、二人の間に入れなかった。
 幼子の声は、場所が低すぎて、青年の耳にまで届かないのだ。
 後ろはフォトに任せて、前を歩いているクウの元に行くことにした。
 ラライが先に行っている以上、何かあれば、クウと戦鳥たるリスカの二人で対処しなくてはならない。
 リスカは気を引き締めると、クウの側に駆け寄った。
 深緑の瞳が、側に来たリスカを見下ろす。
 リスカは、感心した風に声をかけた。
「しかし、見直したぞ。クウは、咄嗟の状況に強いのだな」
「いやぁ、光の盾は失敗でした。まさか彼らの術とあんな反応するなんて、思ってもみなかった。危うく、リューイ様を失うところでしたよ」
 クウは苦笑いを浮かべた。
 その顔には、陽だまりに寝転んでいた頃のような余裕は感じられなかった。
「そうだ。あの爆発はどうして起こったのだ? 光は闇を照らすし、闇は光に影を落とす。ぶつかれば相殺し、最後に残った方の現象が起こるものだと私は認識している」
「……それは、ここが異世界だからでしょう。我々の知っている『闇』と、この世界の『闇』は、似て非なるものなのでしょう。
 これは推測ですが。我々の『光』とこの世界の『闇』は相殺しない。代わりに、互いに強く引き合う。それこそ術としての形を保てなくなるほどの細かな粒に分裂してしまう。粒は引き寄せられながらも、混じらず衝突を繰り返す。そうして生まれたエネルギーが、ある一点を超えると爆発となって、放出されるのではないかと。
 まぁ、闇を扱う『彼ら』の協力を得ないと、真のことはわかりませんが」
「そのこと。黒い翼の者――地牙族らは気づいていると思うか?」
「さぁ? まぁ、あの爆発を『光の盾』の効果と勘違いして、怒っていたみたいですから、気づいているようには思えませんが……何でまた、そんなことをお聞きに?」
「我々の武器になりうるからだ。いかに戦鳥と言ってもやはり天使の端くれ、攻撃魔法より結界を張る方が容易い」
 リスカは、その愛くるしい外見に似つかわしくない言葉をきっぱりと言い放った。
 クウは、ほんの一瞬、眉をゆがめて、
「……まったく、『中央』の教育ってのは……」
 そう幼子に聞えないよう、小さな声でぼやいた。
 そして、真剣な眼差しを向けてくる子供の髪を撫でた。
 そのクウの手を払って、リスカは不機嫌そうに口を尖らせた。
「何だ。子供扱いするな」
「ああ、気に触ったのなら失礼。……大丈夫。アナタの出番はこんな地の底ではなく、大空の中にある。必ずやアナタをそこにまで連れて行きましょう。だから、それまではどうぞご自愛下さい」
 クウは、いつかの陽だまりの中で寝ていたときと同じ、優しい笑みをリスカに向けた。
「それは、我々が『中央』に認められるという事か?」
「……ええ」
 クウは少し間を置いてから、肯定した。



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