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SW4 準備号の一部

Categoryサークル情報
クリスマスーぅな品の用意なんて、できてないもので。
準備号の冒頭部分から、主人公側の登場人物がわかる辺りで。

表紙が描けたら、ちゃんとしたサンプル用意しまする。

※製作中のため、内容は変更されることがあります。

 轟(ごう)、と風が吹いた。周囲の木々がしなる。
 青空を埋め尽くす灰色の影に驚いて、鳥が飛び出した。
 山道を下っていた旅人は空を見上げた。

 霊力飛空船だ。
 飛空船はそのまま真っ直ぐに、城壁に囲まれた都市を目指していた。

 大陸東端の国、クランクハーゲル王国。
 その主都である王都クランクハーゲルが、その都の名前だ。
 旅人は風で緩んだ襟元を正し、フードを深く被り直した。
 布の隙間から覗かせる眼光は鋭く、羽織るマントの裾はまるで腐れ落ちたかのように朽ちていた。

 すれ違う二頭立ての馬車の窓から、青いエプロンドレスを着た少女が期待に満ちた顔で、誰かに話し掛けているのが見えた。
 どの馬車も似たような雰囲気で、御者の顔までどこか明るい。
 もうすぐ始まる英雄祭が、楽しみで仕方ないのだ。
 旅人はフードの下で小さく微笑むと、都市とは逆方向に歩き出した。




1/英雄祭


 城で祝砲があがると、一気に辺りが賑やかになった。
 王宮前広場から続くメインストリート、カルセット通りは屋台や出店が並び、たくさんの人が溢れかえっていた。
 道の中央を観光用の馬車が、年配の客を乗せてゆったりと歩を進めていく。王都クランクハーゲルの街並みを眺めるだけでも、楽しいようだった。

 休日の比ではない人込みの中から、ひとりの少女が顔を出した。
 茶色い髪をバンダナと頭の後ろで結って、その丸く大きな青い瞳は左右の屋台の間で揺れている。若草色のマントの下には、少女には不釣合いな短剣が見え隠れしていたが、皆、祭りに夢中で気づいた様子はなかった。
「ほら、シエテ。こっちこっち」
 少女がそう言って手を引っ張るのは、ワンピース姿の女の子だった。ハーフエルフのシエテは小柄で、手を繋いでないとすぐに人込みに埋もれてしまう。
「あ、うん。待ってナイア。後ろついてきてる……?」
 心配そうにシエテの言葉に、ナイアは後ろを向いて背伸びをした。ひらひらと揺れる手が人の隙間から見えた。その下に黒い頭が見える。

 背の高い黒髪の少年が、数人の女の子のグループに捕まっていた。
「ごめんね。連れが居るから」
 名残惜しそうにしている女の子たちを後にして、ナイアたちの元へ早歩き気味にやってくる。そのすらりと長い手足に中性的な顔立ちは、この人込みの中でも目を引いた。
 ナイアは目を丸くして、頭一つ分は背の高い少年を見上げた。
「うわー、今ので二組目だよね。ノウラもてもてじゃんっ。そうだ。ノウラの気に入った子がいたら別行動とるから、いつでも言ってね」
「う……うーん。女の子にモテても……ね」
 ノウラはいつもの無表情だったが、その緑色の瞳は気まずそうにしていた。
 不思議そうにナイアは首をかしげると手を叩いて、
「あ、もしかしてノウラって年上が好み? うん、ノウラならいけるって。……さって、あとはロンドだけど」
「年上好みはそうかもしれないけど、そうじゃなくて僕は、」
「あっ! また店の前で引っかかってる! もう、ここではまだ買わないよって言ってあるのに。あたし、ちょっと行って来るね。すぐに戻ってくるから待ってて」
 ノウラが言い終わらないうちに、ナイアは駆け出していく。すぐに人の波に埋もれてて見えなくなった。

 ノウラは溜息をついて、
「……一体、いつになったら、僕は女だって気づいてくれるんだい」
「ど、どんまい。だよ」
 肩を落とすノウラをシエテが励ました。
 すらっとした体つきの彼女は、悲しいほどに胸がなかった。
 ノウラの後ろでは、王都マップを手にした女の子の二人組みが声をかけようとしていた。



 多くの人が行き交う中で、そこだけぽっかりと空間が開いていた。
 屋台の香ばしい匂いに誘われたのか、金髪から長い耳を覗かせている少年が、白い狼と一緒に串焼きを覗き込んでいる。
 牛や鳥の他に、魚やエビも並んでいた。ここ王都クランクハーゲルは海に近い事もあって、海産物も豊富だった。
「美味そうだなぁ、ミーシャ」
 ミーシャと呼ばれた狼が元気よく咆える。手ぶらの少年に対して、狼は小さなリュックを背負っていた。
 焼けた串を並べながら、割腹のいいおばさんがぼやく。
「困ったねぇ、これじゃあ商売にならないよ」
 狼を気にして、店の前を避けるようにして人が歩いて行く。
 大変な営業妨害である。
 しかし、少年はその事に気づいた素振りはなく、狼に語りかけていた。
「右のが良いって? でも、これタレがかかってるんだ。ミーシャには濃すぎるんじゃないか?」
 ああだこうだ言いながら、獣連れの少年は串焼きを選んでいる。
「よっし、決めた! おばちゃん、この左端のを一本」
 少年が声をかける。
 しかし、屋台のおばさんは狼の方を見てばかりいた。
「餌をあげたらどっか言ってくれるかしら。でもそのままいつかれたら困るしねぇ」
「だから一本買って移動するからさ。おねえさん」
 呼び方を変えて、少年は言い直した。
「参ったね。ほんと、”飼い犬ひとりほっぽっといて、飼い主は何してるんだろうね”」
 会話がかみ合わない。少年の長い耳が、ぴくりと動いた。
 少年は上げた右腕を降ろした。その褐色の肌には、歴戦の勇士を思わせるような無数の傷痕が残っていた。
 少年は相棒の脇に屈みこんで、その柔らかな毛並みを撫でた。
「慣れたつもりだったけどさ。やっぱ、少し寂しいな」
 気落ちしている主人を慰めようと、狼が一声鳴いた。

 幽霊の獣使いロンド。
 彼の元の体は怪物(レギオン)との戦いで失われ、今は供に居る狼のミーシャを守護する【共在魂(ゼエレ)】としてこの世に留まっていた。
 霊魂を感じたり、見ることのできる人間が多いと言っても、このようにまったく見えない人も存在するのだ。

 少年の頭上から元気のいい声がした。
「ちょっと、ロンド! 店の前に座り込んでないでよ。迷惑になってるじゃない。パレードが始まる前に良い場所をとるんだからね。アンタが見てみたいって言ったんでしょ」
 ナイアが片手を腰に、もう一方の手で周囲を示しながら立っていた。その目は真っ直ぐに少年の方をみていた。
 走って来たようで、赤いバンダナを巻いてる額にうっすらと汗を掻いている。
 ロンドは口元をほころばせて、立ち上がった。
「いやさ。ミーシャが喰いたいって言って動かねーんだよ」
 叱られているのに嬉しそうにしている『幽霊』に対して、ナイアは嫌そうに眉をよせた。
「えーっ。ペット同伴OKで美味しい店考えてあるのに。そんなに食べたいの?」
 白い狼は元気良く咆えた。
 その足元の石畳はヨダレで濡れている。
「……しょうがないなぁ。とりあえず立替とくから、後で払ってよね。おばさん、適当に薄味のお肉をひとつ」
 観念したように言うと、ナイアは財布から銅貨を取り出してロンドの代わりに注文する。
 肉を櫛からバラす間もなく、白い狼は齧り付いた。
 指まで咥えられる寸前で、ナイアは逃げるように串焼きから手を離した。顔が真っ青だ。ガイスト候補生として、怪物(レギオン)と戦ったことがあっても、大きな獣が怖いらしい。
「ミーシャが、ありがとう、だってさ」
 そんなナイアの様子に、幽霊の少年は笑いながら言った。


・/・


 レギオン災害と呼ばれる事象がある。
 それは有体に言えば、怪物の横行だった。

 ゲートと呼ばれる「揺らぎ」より生まれる異形の怪物レギオン。
 抗う人々が弓を射掛け、火を放ち、大砲を持ち出したところで、レギオンは城壁ごとそれらを粉砕した。

 とある生存者は、襲ってきたのは巨大な石の化け物だと言い、ある者は見たことの無い生き物だったと言い、はたまた捕えどころのない雲のような姿をしてたと言う。
 彼らの証言で共通しているのは、それが生き物への明確な殺意を持っているということ、物理的な接触が困難だということ、そして、繁殖や新たな土地に移動することはせずに消えてしまうということだった。
 嵐が過ぎ去るのをじっと待つように、多くの人々は襲われている村を見捨て、自分たちの所にその災害が訪れないことを祈るしかなかった。

 ごく一部の人間を除いては。

 【共在魂(ゼエレ)】と呼ぶこの世に在らざる力を用いて、普通の武器では倒せぬはずのレギオンとその身ひとつで戦いを挑む者達がいた。

 例えば、古びた剣一本で立ち向かう戦士。
 例えば、天使の加護で奇蹟を行使する聖職者。
 例えば、悪魔と契約し力得た魔術師。
 例えば、精霊と契約しその力を借りて戦う精霊使い。

 そんな彼らを、人は【ガイスト】と呼んだ。


・/・


本文に続く。

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